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イン・ザ・ヒーロー(子供の心を持った大人がいるんだよ!!)

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 知らない監督、知らない脚本、脚本の半分は「夢を叶えるゾウ」の人、ということで映画としては全く期待しないまま鑑賞しました。なのになぜ見に行ったのか、というと、そもそも唐沢寿明が好きなのと、「歴代のレッドの中の人」というツボな設定故てす。
 そして、冒頭の昭和テイスト溢れる劇中番組のオープニング(しかも串田アキラ!)でもってかれて、あとは、勢いよく心地よくドラマの波に流され、笑い、感動し、涙腺緩んだところで終幕。めちゃくちゃ面白い。

 特撮とかスーツ抜きにしても、これは「映画作り」の物語として秀作です。新人アイドルがだんだん素直になっていく展開(前半の態度の悪さにもきちんと理由があり)、最後にとうとう「リーダー!」と叫ぶところでのひとまとまり感。ずるいなあ。

 あと、カット割りとカメラワークが気持ちいい。特に、カメラは色合いの出し方やとばしかた、背景のぼけの入れ方等々、みていて気持ちのよい仕上がりでした。

 で、

 まず、「東映」がこれを作った、という事実が一番の大ネタです。その上で、「スーツアクターは顔も名前も出ない」という表現は(取材ででてきたキーワードなのだろうけれど)、現実とは少々ずれてます。事実、スーツアクターへのおっかけもいるし、そのへんの三文俳優なんざ顔と名前しか覚えてもらえないのに、今日日のスーツアクターは「体形体格(背中のライン、腰からお尻のライン)やちょっとした動作の癖まで覚えられて、現実の「ヒーロー」になっているので。
 特撮新番組では、俳優よりもスーツアクターが誰なのか、が話題になりもするし、逆に戦隊ものでは俳優がスーツに入ってちょこっと顔をだしながらアクションするのが様式になりつつある。

 さらにいっちゃえば、日本のドラマ制作現場では、ちゃんとした物語とドラマを描けるのはもう日曜朝の特撮だけです。だから、優秀な脚本家もそこからでてくるし、トレンド俳優でごまかしのきくオトナドラマなんか目じゃない、という事実もある。そんな中での「スーツアクター」は、この映画の企画意図よりずっと大きな存在です。だから、これはちょっと前のお話。あるいは、ドラマや邦画の「業界」が特撮に対して持っている偏見がベース、でしょうか。

 スーツアクター経験者の唐沢・寺島両名がいるからこその説得力もあります。「スタンリー・チャン」という露骨にまぜこぜな監督名もそのハチャメチャな言動がすべるぎりぎりです(いや、蛇足では完璧にすべっていました)。寺島さんのモデルの蜂須賀さんもちゃんとスクリーンにでてくるし、いろいろとお祭り感もあって楽しいし、なによりも「最後まで悪人が一人もいない(寿司だけ食べて帰った俳優は微妙)」のもこの監督・脚本家のテイストなのでしょうかねえ。

 二点程明白な不満をあげるとすればBGMが絵とあっていないこと、これ、あっていないだけでなく「あっちの曲をかけてくれた方が良いのに」という代替曲が思いついてしまう程のミスマッチで、大減点です。あと、せっかくちょい訳ででてもらったのだから及川ミッチーにも一曲歌ってもらえればよかったなあ。

 脚本は、取材とドキュメンタリーに徹底して、へんな自己啓発とか改善行為にいかなかったおかげでぎりぎり失敗せずにすんだのだと思う。このバランス感覚を大事にしてくれればいいのにな、と思ったけれど、この方、テレビで「俺の本を最後までよまずにけなす奴はけしからん、名誉毀損だ」とか言っててがっかりでした。「無理矢理最後まで読ませた」りすると、無駄になった時間と精神的苦痛に対して逆に訴えられちゃうよ?