原題は"The Assignment"。このタイトルが先に来ていれば監督の意図もわかりやすかったのになあ。
設定からいって、ドンバチおばか作品かと思っていたら、あにはからんや。ウォルター・ヒル監督が長年温めてきたアイデア、とのことで、思い入れが爆発したんだろうなあ。物語は「人間性と身体性の調和とは」という哲学的な背景にがんじがらめで、その語り部としてシガニー・ウィーバーがしゃべり倒します。シェイクスピアもポーもギャグのようにちりばめられていくこの部分はちょっとやりすぎかもなあ、とか思ったり(個人的には" Of cource, not"の繰り返しにライトスタッフの"We know"を思い出してお腹よじれていましたが)。
殺し屋フランク・キッチンが、ミシェル・ロドリゲスの兄貴です。一言でいえば「ロドリゲスの兄貴が女性になる」映画。あれ? 今回は男性時の姿も特殊メイクで本人が演じている(エンドロールでもフランク・キッチンは男女両方で個別にクレジットされます)のだけれど、これがすごい。特に、女性になってからがすごい。なにしろ、体のラインはちゃんと女性(しかもスタイルのよい美人さん)なのに、細かい動作の一つ一つが実におっさん、なのです。途中、女性のロドリゲス兄貴がさらに女装する(あれあれ?)シーンもあるのですが、これがまた見事に似合ってなくて全然女らしくない(笑)。もう、物語とは別のところで、ミシェル・ロドリゲスという存在にもっていかれる映画、でもあるかも。
監督が見据えたかったジェンダーの問題と身体性について、もう少し事前にうまくひろげておけば、映画への評価も変わったのではないかしら、とちょっと勿体無いです。最終的には、シガニー・ウィーバーの意図した「身体性をずらすことで内面も影響されていく(Assignment)はず」という理論にフランクも流されていくのだから。
もう一息、なにかがあれば大きくばけただろうになあ、という一抹の残念感。
あと、パンフレット、つくってくださいよ… ほんと、お願いしますよ…