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劇団「春の日ボタン」・第2回公演 「まんまるレールウェイ」

オムニバスは流行ですか?

#表記の舞台を知らない方にはちんぷんかんぷんな内容です。申し訳ない。

ここの前回の公演もそうだったのだけれど、オムニバスにしておいて、さいごはちゃんとまとめずにほうりなげっぱなし、という痛々しい手抜き仕事。たぶん、これまた前回同様、本をかいていったら尺が長くなりすぎてむりやり削った結果なんでしょうけど、その割にはだらだらとした場面も多いし。

どちらにせよ「まんまるレールウェイ」というタイトルなのに、まんまるにまとめないで放り投げておしまいというのはねえ…

役者さんはみんなとてもよいのです。一人一人、個性が強いのに舞台が崩れない。このひとたちの、ちゃんとした舞台を見たくなります。

脚本に用意されている笑いの小ネタもところどころおもしろい。
まとまらないのはひとえに、シナリオの全体構成が破綻していることが原因。

ようするに「いいはなし」にしようとする汚らしい大人の作為が働いた結果すべてをぶちこわしにしているわけです。

各ステージおさらい。
・ローカル駅
(導入が長すぎ。しかも、冒頭のステージなのに後のストーリーにかすかにしかからまない)
・レストラン
(前半の繰り返しギャグがすべっていて気持ち悪くなる。後半のキャラクターはとても魅力的なのにもったいない。また、本来ならばこの店が最後の円環を閉じるもっとも良いステージなのに結局生かされない)
・タウン誌
(一番小ネタが生きていたけれど、さいごのまとまりには参加しない上、回収すべき伏線を放置し過ぎ。上野・成田のからみも手抜き。レストランというステージにむけて、ここの記者が縦横の間の糸を縫い付けていく流れになるべきだったのでは?え?そうしたつもりだった…んですか?またまたご冗談を…)
・ぱん屋
(役者はとてもよい。けれど、とってつけたような「いい話」は不自然なだけ。メインにしたかったのならばもっと前半からからめないと。牧場とのからみも欠けている上、タウン誌との関係なんかはいかにもなとってつけ。レストランが「釜を借りるだけ」なのもだめでしょう。)

ここで終わるのを「尻切れとんぼ」といいます。

これ、既存のステージを生かすとすると、

・食べ物[レストラン(含:ハンター)、牧場、パン屋]
・地元[ステーション、タウン誌]

なんですよね。食べ物の地産地消とローカルの元気、という観点からだと、さらに

・地元活性[レストラン(含:ハンター)、牧場、パン屋、タウン誌]
にしてもよいかも。

つぶれそうなローカル線に都会からてっちゃんがくる、という導入は悪くないので、そこからスタートするならば、
ステーション(廃線の危機感)→レストラン(景気がわるくて改善思案中)→牧場(二代目になって経営不安)、と、ここまでは自然な流れです。展開上はさらに →パン屋(火事)→みんなでよってたかってパン屋の復活→レストラン梁山泊状態(笑)→地元最強のフレンチレストランの完成→全国展開タウン誌(笑)によって日本中からてっちゃんがやってきて町おこし大成功(てっちゃんではじまりてっちゃんで終わる)、がメインストリームでしょう。それなりに少しづつ不幸だった全員が少しづつうまくいってつながることで幸せになる、というのがおそらく「まんまるレールウェイ」ですから。

それなのに…、たかが「一ステージ」にすぎないはずのパン屋にフォーカスをシフトしたのが敗因です。パン屋が一番「泣けるいい話」になりそうだったからなんですかねぇ。これ、とてつもなく軽卒な展開ですよ。そのせいで構成が破綻して途中「語りによる時間経過説明」なぞという痛苦しいことまでしなくてはならなくなる。

タウン誌は、もっと小刻みに各ステージの間にはさまってエピソードをつないでいく役割を担うべきでした。
いや、そうしようとした気配はあるのですがまったく機能していません。キャラクターのやりとりがおもしろくなりすぎたからといって、一ステージをのばしすぎ。これは、分断して幕間的にはいるべきでした。ステージとしては、実はタウン誌だけは「とくに変化なくよいこともなし」で終わっています。「雑誌が廃刊」というのもマネージャーのでっちあげだったわけですし。結局普通に仕事をしていただけで、「まんまる」の環にいれてもらってません。

せっかく、マネージャーと編集長を双子にしたのにその設定もいつのまにかただのギャグ要因にすぎなくなってしまいます。この双子、都会からきたいわば外様の立場からタウン誌つくっているのだから、上記の流れを客観的に見ることができるわけで、実は唯一観客に近い立ち位置にできるキャラクターだったのにねえ。ほんと、もったいないですよ。

せっかくの双子を生かすとすれば、実は、現実的なマネージャーと芸術家肌の編集長はお互いの才能に嫉妬したりしてなかなかうまくいかない部分があったのだけれど、タウン誌がきっかけで成功したレストランで最後に仲直りする、というのが文字通り「きれいな」まとめ方になったはず。たとえば、片方がベジタリアンで片方が肉好きだとか趣味の違いがあるのにこのレストランはどちらも(個性的な面々のせいで)満足できて、とかね。

オムニバスにしたい、というのなら、映画「ボレロ」くらいのことはしてほしいです。ただ、おもいついたネタをたれながすだけなら木戸銭とってはいけませんよ…