Anything Goes (again) ...

Yahooブログから移りました

アイ・インザ・スカイ(アラン・リックマンの遺作)

イメージ 1

 ドローンを使った現代の「戦争」。テロリストの自爆テロを未然に防ぐための作戦行動と、「みせかけの人道主義」とのせめぎ合いの物語。作戦行動によって「目の前で人が死ぬこと」をどのレベルで許容できるものなのか、「罪のない子供」(いや、一度売ったパンが道路に撒き散らされたら、それを拾い集めて何食わぬ顔をしてもう一度売る程度にはあくどい)に対する「社会的な愛情」をどうやって処理するのか。
 スクリーンのこちらがわにとっては「強硬派」の正しさは明瞭です。決断が遅れれば遅れるほど、テロリストは目の前で野に放たれ、捕捉できなくなり、大量殺戮をなすがままとなる。やらねばならないことは明白で、ヘレン・ミレンの演じる大佐はそのためにありとあらゆる手段を講じようとする。でも、「決断を下す」連中はその行為が自分の責任となることを嫌がって先送りにし、上層になげあげて責任逃れをしようとし続ける… 
 中盤の政治家たちの責任逃れシーンは秀逸なブラックコメディです。某庵野ゴジラでの会議ギャグなんかこれにくらべたら笑いも毒も児戯みたいなもの。しかも、中にほんの数人だけ状況を理解している人がいる、というのも上手です。
 ドローンからミサイルを撃つ若者の青臭い正義感も、なかなか心にくい描写です。最後、なんとかダメージ率を低く見積もりあげて攻撃した後、「子供が動いた!」と生存確認をし、そのために彼らの罪悪感は若干薄まります。でも、ドローンのカメラからはずれたところでその子供は絶命している、というスクリーンのこちらがわの物語。
 「手を下さない戦争」と揶揄するエセ人道主義者に対してアラン・リックマンが放つ最後のセリフこそ、この作品の真骨頂でしょう。
 実に見事な「映画」を見た、という気持ちで劇場を離れることができる稀有な一本です。