悪のり映画かと思いきや、意外とまじめに風刺しようとした作品、です。もちろん、悪ノリ的な部分はたくさんあるのだけれど。
でも、まじめな風刺がストレスとしてのしかかったのか、もうひといきはじけっぶりがたりないかなあ、と。いや、もちろん劇場では大笑いしながらみていたのですが。
北朝鮮ネタ(あれはうちのものだ!)とか、宇宙で核をうちまくるU.S.S.ジョージ・W・ブッシュとか。ちゃんと日本の船も武装していた(笑)とか。
複雑なのは、「ナチ」の扱いと「アメリカ」の扱いとが複雑にからみあってしまったからでしょうなあ。うまく整理がついていない。せっかく、アホな大統領が票のために黒人を無意味に月に送り出す、ところからはじまっていたのに。そして、その場面やほかのシーンから、「アメリカとナチ・ヒトラーと大統領」の相似対置がみえていたはすだったのに。パロディや皮肉については別に制限している気配もないので、純粋に脚本のねりが足りなかった感じなのかなあ。
もったいないのは、大量の皮肉とパロディを見逃してしまっているに違いない事。どこかで解説本ださないかねえ。かかわった縁もあるし、町山さん、やらないかな。
見終わって、一言で表現するならば「今風につくった博士の異常な愛情」ですかねえ。ラストシーンも含めて。ライバッハの音楽もなかなかよかった。
「映画のつくりかた」として考えたときは、アイアンスカイはなかなか面白い先例をつくったと思います。ハリウッド的、とか今風の邦画的、みたいな枠からはみだして「映画」をつくるための一つの方便。その意味で富野御大がほめているのもわかる。作品としての完成度を高めるために、もう一声何かが(たぶん、脚本家)が欠けていた事が実に惜しい。
てか、この設定で、ザック・スナイダーあたりが撮ってたらなあ、とか思いました。