Anything Goes (again) ...

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俺はまだ本気だしてないだけ (将来って今じゃん)

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 HKで福田監督を気に入ったので、という流れ。周囲を振り回す自由人な主人公。本人はなかなか変化できないのに、周りの人間達をどんどん変えて行ってしまう影響力の持ち主、というあたりがミソ。
 出演者の印象は、堤さん良い声、山田君しぶくてよい味出してる、ネクサス川久保君ひさびさだけど妙に存在感あり、生瀬さん、ちょっと普段と違う感じ、とか。あとはいつもの「福田組」。

 で、もうひとつのポイントはこれがきれいにクリエイターの産みの苦しみの話にもちゃんとなっている、という所。刺激を受けてやめちゃう編集者も、パン屋になろうとしちゃう友人も、結局は「作り手」になるためのハードルをこれから超えて行くんだよね。

#息子つれて離婚した奥さんが子供の一言で再婚相手ほっぽりだして元のさやにおさまるのってどうなん?
#とは思った。あれ、またうまくいかないフラグだよねぇ。

 で、ふと気がつくのだけど、この主人公、漫画だって実際のところそこそこうまいしおもしろい(あれ以下のマンガなんか世の中の雑誌にごろごろしている)。ギターだって十分うまい。つまり、主人公は実は成功を約束された才能の持ち主なんだよね。仕事をしていないといっても、一度はちゃんと就職していて、仕事ができなくてクビになった訳でもない。人間性が醜悪なわけでもないから友人もいるし、一度は結婚もして子供もいる。そのあたりが堤氏の存在感でうまく着地点をみつけた感じの映画、です。リアルな「社会のクズとしての中年ニートの話」、ではない。そういう意味ではこの映画は原作以上に原作っぽいのかもしれない。
 40歳過ぎて独立せずに親にたべさせてもらっているニート、という枠組み(「現実」を考えたらとてもではないけれど映画の主役にはなれない、というギャップ)の中で、世間一般が想起するような「キモチワルサ」を感じさせないのもそういう作品世界のある種の健全さのためなのだろうと思う。
 まあ、現実に中年すぎて働かずに家でごろごろしている息子、なんていうのは親にしてみれば心配と問題の種でしかない事の方が多いだろうから、そういう息子を持つ老いた親としては「ウチの子もせめてこれくらい前向きでいてくれたら…社会との接点をもってくれたら…」とため息をつくような出来映え、ともいえるのかな。

 さいごはほろりとする良いできばえでした。いや、噂になっていた「ジブリの予告編」が映画の前に流れて本当に良かった。あんなのがエンドクレジットの後に割り込んできたら不愉快極まりないもの。

 パンフレット、雑誌スタイルで読むところも多くてよいのだけれど、微妙に安っぽい感じがするのがまたずるい(笑)