Anything Goes (again) ...

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さよなら、人類 (元気そうでなにより)

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 モノトーンの風景は北欧の色。実際に向こうにいくと風景はこんな色をしています。その中で、たんたんと語られる面白くもおかしく、そして哀れな「人類」模様。そこで語られているのはリアルなのか妄想なのか。シチュエーションはサムとヨナタンの二人を軸にまわりますが、彼らが遭遇する背景もまたあわせて描かれるのでスケッチは相応の数になり、キャラクターもそれなりの数になります。
 途中から、どうもこれはヨナタンの世界なのではないか、というシーンがはさまりはじめ、周辺がそのヨナタンのナイーブな世界をじわじわと削り取り始めていくにつれてだんだんどうにもならなくなっていく気配がしてきます。いわば、これは現実vs.ヨナタンの戦いの系譜でもあるのかもしれない。そして、そんな自分のことをヨナタン自身が自覚しているものだからさらに絶望的な厭世の空気が流れ、そういう「人類」の物語になっていく。
 途中、ヨナタンの精神世界がオーバーラップしていくところは、夢の「楽器」のあたりから明白になります。一番はっきりしているのはヨナタンに言葉を吐きにくるサムが「向かいの部屋(しかも内扉付き)」からやってきて帰っていくシーン。直後に現実のサムが並びの部屋にいることが丁寧に示されて、観客は、はたといままで見てきた映像のうち、どれがヨナタンの中で、どれが現実かわからなくなっていくわけです。
 たんたんとすすんでいくシーンの中に、くすりと笑えるものやストレートにいい話や、目をそむけたくなるような場面が並んでいるのが「人類」ということなのでしょう。どことなく現実感が乏しい感じなのに、「そういうもの」として受け止めてしまうし、そうやって受け止めているうちにさらに頭がぼんやりしてくるような。そのうち、登場人物はみんなすでに死んでいるのでは、とか思えてくるような。
 見る人を選ぶけれど、波長があえばとても良い作品だと思います。