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ホワイト・ゴッド(犬たちはみんなとても楽しそう)

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 「虐げられた犬かわいそー」「人間てわがままでひどいー」という軽薄な見方をすると感動的な問題作になるらしいです。へーそーなんだー。
近場ではちょうど良い時間にかかってなかったので今年何度目だろうかのシネマカリテへ。入場時に映画と無関係な謎の手帳のおまけをもらい「?」。その後のアナウンスで「上映後に30分ほどのトークイベントがあります」(誰がトークするのかのアナウンスなし)でまたしても「??」。
 物語はあまりテンポがよろしくなく、淡々とすすんでいきます。「雑種には税金を」という設定自体の雑なファンタジー感で、冒頭の時点でこれが「その手の感動作」を目指していないのは明白なのになあ、と思いつつ。いや、そもそもが最初の牛解体シーンでこれが「感動作」とは違う方向性を目指していることは明白でしょう。「これを残酷というの?」というシーンでしょうに。
 母親が海外に三ヶ月でかけるので、離婚した父親に預けられた主人公と雑種の犬。父親は「余計な税金なんか払いたくない」と犬を捨てるか保護施設に預けるように言い、結局犬は捨てられていろいろと酷い人間の間を転々とするうちに野生に目覚め、保護施設の犬たちをひきつれて「酷い人間」に個別かつ的確に復習していく物語。主人公の女の子が「普通にいそうな生意気な子供」というのもリアリティです。さらに、別に犬に超能力や知能が付加されるのではなく、「ただの野生の犬」というところもポイントでしょう。そういう意味で猿の惑星よりも説得力はあります。あんたらがカワイーカワイー言ってる犬って、本気になったら素手の人間じゃ太刀打ちできない「けもの」なんだよ、わかってんの?と。
 犬たちの集団脱走から後はパニック映画「様」の展開になります。音楽もそんな感じでおどろおどろしく恐怖をあおります。でもね、だめなんですよこれが。
 少なくとも犬を知っている人間がここのシーンをみたら、「広大な敷地でなにやってもいいよー、と許されたたくさんの犬たちが楽しそうに走り回ってじゃれて遊んでいる幸せなシーン」にしか見えない(笑)。みんな、のびのびと本当に楽しそうに駆け回っているんです。みているとほのぼのとしてきて、ああみんなよかったねえ楽しいねえ幸せだねえ、という気持ちになりますよこれ。
 たぶん、アメリカから呼んだトレーナーさんが優秀だったのでしょう。逆に、これをみて「犬たちかわいそう」と涙してしまう人はもしかして「犬の様子」がわからない人たちなのではないか、と疑問に思えます。もっとも、タイトルが「ホワイト・ゴッド」なので監督自身も想定していなかった結果なのかもしれませんけれどねえ。

 で、オチですが、上映後の「トークショー」はペットを保護施設から引き取る橋渡しをする人、でした。映画についてはほとんどなに一つ触れません。一応「映画をみてどう感じましたか?」とフロアに問いかけるのだけれど、「犬たちがみんな楽しそうで幸せな気持ちになりました」とはとても言えない誘導的雰囲気(笑)。配給会社のおしつけ企画だったのだろうけれど、こういうことがつづくと映画館としての信頼も下がるので気をつけたほうがいいです、シネマカリテ様。少なくとも今後は事前に「誰のトークショーなのか」くらいは明確にしてください。お願いしますほんと。