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「ヘイトフル8」(で、猫はどうしたのか)

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 70mmで撮影され、オープニングでキャストリストが提示され、章立ての間にタイトルがはさまる。映画館に行くこと、が一大イベントだった時代の「昔の映画ってこうだったんだよ」という贅沢さ。(そもそもはインターミッションまであったらしい!)パナビジョン70によって広がったスクリーンには所狭しと情報がつめこまれ、それらを追っているうちに画面の中にひきづりこまれてしまいます。ほんと、70mmフイルム版で見たかった。音楽はこれでアカデミーをとったモリコーネ、特殊効果がダグラス・トランブル
 物語は癖のあるキャラクターの密室での出来事、ということで、監督お得意の会話劇。その会話を読み解くヒントが小屋の方々に無造作に放り出されていて、きちんとフォーカスされてもいるわけで、これをわかってから二度目を見るとまた面白さがかわるのだろうな、と。
 とにかくスクリーンの端から端まで一瞬も気を抜けない高密度な画面なので、そういうのを追う楽しさを知っている人にとっては退屈する暇もないジェットコースターのような一本。画像の情報密度に対応できない人にとってはただただ退屈な一本、でしょうねぇ。ジャンゴに比べると対一般用のサービス精神も少ないし。
でも、作品の背骨を走るテーマはジャンゴと一緒。なるほど、こっちか、と。企画の初期段階ではジャンゴの続編だった、というのも納得です。 
 途中でぶっこわされるギターがリアルに博物館から借りたアンティークだった、とか、ほうぼうにジャンゴグッズが隠れている、とか、監督はちゃっかりとナレーターやってる(今回は爆発しなかった)、とかいろいろとやらかしているのはいつものとおり。個人的には、画面の前後でフォーカスを入れ替える時の軸のささやかなずれが気になってました。レンズのせいなのかな。
 でも、「床下」と「井戸」はずるいです(笑)。よもやと思うけれど「ミステリーを見に来たつもり」の人たちはあれでアウトだろうなあ。とはいえ、監督のことだから「普通のミステリーの展開」なんざネタにするためにしか存在しないのだろうし。あと、「R18+」なんだから「暴力的なシーン」がダメな人も最初からみにいっちゃいけません。当たり前だけど。

 深夜の映画館では時折周囲のお客さんの笑い声が聞こえて来るほのぼのとした(おい)雰囲気で、後半の冗談のような銃撃シーン(その割には頭蓋部吹っ飛ばされた後の骨片とか組織の再現は妙にリアルだったり)もタランティーノです。とはいえ、自分は笑うようなセリフのところでも画面の隅々に目を走らせるのに夢中で笑っている余裕とかあまりなかったのですが。なにせとにかく「見るものが多い」んです、この作品。ほぼ三時間で満腹になります。

 悪ノリの方向性とか、セス・マクファーレンがひたひたと追いかけてきているのだから、タランティーノとマクファーレンで悪ノリ作品つくったりしないもんですかねえ。タラちゃんが10本目を撮った後でいいからさ。