近未来SF。監督ははっきりと「SFアクションではない」ことを主張していて、ハリウッドスタイルの派手な未来モノではない、というスタンス。人口の激減した近未来の人類の住む街並みなんかはさながらブレードランナーだし、ビジュアルには力が入っていて好み。オートマタというのは人型のロボットで、ぶっちゃけてしまえば、ロボットの制限プログラムを解除したことで人類の次の支配種として目覚めていく、という物語。どのみち太陽風の激化で地上は人間の住める環境ではなくなりつつあるのだし、仕方ないね、と。
無機的なオートマタたちがだんだん個性的にみえてくるかわりに、人間たちがだんだん下等にみえてくるのは監督のうまさ、です。壊された仲間からパーツをとりはずすオートマタを見て「あいつらはハイエナだ」とけなしていた本人が、自分が殺した相手からチョコレートをまさぐりだして泣きながらたべるのだから。しぶく、地味につくられているこの作品では派手なアクションも華々しいラブシーンもありません。ひたすら泥臭く未来のない人間たちと、そこから誕生し、あっというまに人間を追い越して行ったオートマタたちのせつない関係性が描かれていくだけ。なので、これもまた「見るものを選ぶ」タイプの一本です。アントニオ・バンデラスがデッカードばりの名演技で画面をひきしめてくれるのもよかった。
こういう拾いものがあるので映画は楽しいのです。