Anything Goes (again) ...

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パッセンジャー(エンジニア万歳)

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 エンジニア物語。長期冬眠による移民船設定だけど、物資もエネルギーも潤沢で生活には全く困らない、という「選択ストレスのない冷たい方程式」です。シールドをかいくぐったデブリのせいで偶然冬眠から起こされてしまったエンジニア(乗客ランクは低いけれど実は超凄腕っぽい)が自分のわがままでもう一人女性を目覚めさせる、というストーキング行為が前半、同様にシステムの不調で起こされたクルーとの接触で事態の解析と上位権限の解放にたどり着く後半、という構成です。
 しかし「わたしの人生を奪った!殺したも同然!」と叫ぶヒロインですが、このひとも人間関係を全部捨てて書き物のネタのために往復数百年の旅にでているわけで、「何をかけばいいのかわからない」というのならまさしく「旅の途中で起こされた」シチュエーションこそ格好のネタでしょうに。しかも、起こしたのがあまり肉がだぶついていない季節のクリスプラットで、なおかつ技術者としてなんでもできる人、とかもうウハウハなごちそうでしかないのでは。

 そういう映画なので登場人物は少ないです(回想シーンとかはあるけど)。少ない中で異色を放つのがロボット…ではなくアンドロイドのアーサー。いや、バーのカウンターから出られない、というかたちで場面を限定していたけれど、最終的には船内最強のキャラクターでしょう。なにしろ、物語の全てを見続けているのだから。アーサーの登場シーン、シャイニングのバーを彷彿とさせてどきっとさせられます。そして「ちゃんと」そそのかします。くそー、ずるいぞこんなキャラ。

 船内の物語は普通。ただ、ルンパたちのかわいい動作や、重力制御が途切れた時の水球の恐ろしさ、といったところから冒頭の「シールド」表現(スタートレックではいまひとつわかりにくいものを明快に視覚化させました)、等々SFモノとしてはうんうん、という感じのシーンが味わえます。クライマックスのシーンなんかも2001年のボーマンとプールの流れの別解法だし。とにかく、基本的に宇宙船アヴァロンがとてつもなく優秀です。水も空気も食料も電気もなにひとつ心配いらない。基本的にはトラブルは自動対処される。今回はたまたま動力のリアクター部分で対応できない箇所ができてしまったが故のトラブル、ということでした。とてもお行儀いい船で、たとえばこれが2001年のディスカバリー号だったら「オーロラに嘘をつく」ストレスでアーサーが暴走したりするだろうし、エンタープライズだったらリアクターは修理不能で早々に放棄してしまっていただろうし、という感じ。しかし、アンディ・ガルシア、たったあれだけの出演なのにクレジットでの扱い良すぎない?