Anything Goes (again) ...

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ジュピターズムーン(ラビの祝福をうけた映画)

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 ムンドルッツォ監督はホワイトゴッドの人。ホワイトゴッドからはじまる「信頼」三部作の二作目という位置付けのようです。中東とヨーロッパの関係、宗教の再起動と拡大、そこにまつわる人々の宿命と贖罪、という筋道だけ並べると実に明解でわかりやすい話のはずなのですが、タイトルも含めて監督の意図が「SF」に漂うために実に不思議な映像体験をもたらす作品になりました。浮遊する少年、アリアンはイエスであり「天使」(ベルリン・天使の詩を思い出します)でもあります。ラズロは、もちろんラザロなので「2日で」といっていた「少年探しのミッション」、つまり、彼自身の生まれ変わりに至る「銃を下げるシーン」までに「四日」かかります。靴紐を結ぶシーンはいわずもがな。
 物語の前提となっている移民の問題、ハンガリーの問題、宗教の常識が、あまりにも空気のように前提されているために日本人には敷居が高く難解に見える危険性はあります。でも、それをはるかに上回る映像の美しさ。ホワイトゴッドの時もカメラワークは凝っていましたが、今回はさらにアクションも含めて、そして街並みの美しさと浮遊感が絶品です。35mmフィルムの味わい、なのかしら。
 前作の時には「すごく楽しそうな犬たち」が唯一映像の緊張感を崩してしまっていたわけだけれど、今回は相手が車と人間なのでそんなあやうさもありません。個人的にはすごく好きなタイプの映画ですが、万人受けするか、といわれると… (チネチッタで観客5人でした…)ただ、この監督はもうほんのわずかなさじ加減で物語の雰囲気が大きく変わると思うし、そのあたりでメジャー受けもする技を手にすれば大化けすると思っています。次作がアメリカで撮る作品、ということなのでたぶん本人もそのあたりのことはよくわかっているのではないかと。
 次の作品が楽しみです。