Anything Goes (again) ...

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グレイテスト・ショーマン(明るくて簡単であっさり)

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 当時のアメリカの人種差別、フリークス差別についての知識が実は前提されています。ただし、「描かれません」が。観客が映画の行間に何を感じられるか、というだけのところですから別に「楽しかったね」ですませてもかまわないのです。それほど、簡単であっさりしています。時系列の展開もどんどんすっとばして、「見ていて楽しい」シーンだけをつまんでダイジェスト版に編集したような流れ。「そういう映画」なのでしょう。別に心も温まらないし、とくになにかに感動することもありません。と、いうか「そうなりそうなシーン」は全て見事にカットされ切り捨てられています。わざとあえて薄味の空っぽにしている気配あり。アメリカンです。ジョイス・ヘスの話をもりこんじゃうと明るくハッピーな作品にはならなかっただろうから、まあ、「わかっててやっている」あたりでしょう。さすが「バーナム効果」のバーナムさん、というか。

#個人的には木戸銭とって公開解剖をイベント化した、なんていうのこそ映画にむいているのではないか、と思うのですけどね。

 P.T.バーナムは実在の人物なので、ドキュメンタリー的な意味合いもあるはずなのに彼の個性的なエピソードも随分削られて実にお行儀よくなっています。道徳の時間に教室で見せられた教育テレビのわざとらしいドラマみたい。すごくもったいないのです。ちゃんと「バーナム伝」として用意して、バートン監督かデル・トロ監督にまかせていれば素晴らしい作品ができる、そういう素材なのに。

 率直な感想は、「簡単なハッピーエンドに改変された安っぽいファウンダー」です。マクドナルドのかわりにサーカスのテントをつくった癖の強い人間の人生。人間関係についての物語も表層的で、いろいろと主人公が酷いのにみんな最後はさわやかに許してくれる(えー?)。ザック・エフロンなんかただの貯金箱がわりのいい人。音楽も今風で当時の文化の香りなんか全然しない。
 物語は「古い20世紀Fox」から予告編で流れたミュージカルシーンへのリレーではじまります。ここだけは見ていてテンションがあがる部分。ミュージカルシーンとしては冒頭のここと、主人公がやさぐれているところから立ち直る「From Now On」が極め付け、でしょう。あとは、ゼンデイヤの歌うところかな。

 いろいろな意味でアメリカンでした。これから見ようとする人には、セットでバスケット・ケースとエレファントマンをあわせてみることを強くお勧めしたいと思います。あと、「ミュージカル」をみようと思ってはいけません。歌がはさまるだけで、この作品を「ミュージカル」のカテゴリーにいれるのには激しい抵抗があります。
 そういえば、ララランドはまったくセンサーにひっかからなかったので見なかったのだった、と思い出したり。