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プリグズビー・ベア(涙なくしてはみられない)

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 赤ん坊の時に誘拐され、世の中から隔絶した場所で25歳まで育てられた主人公の物語。「偽の父親」のマーク・ハミルが素晴らしい。さらってきた子供の教育のために、近くのスタジオでブリグズビー・ベアというSFドノマを撮影して「毎週新作を用意」してきた教育熱心なクリエイティビティあふれる偽の父親。作品のディスカッションボードでは、イントラ上の掲示板に偽の両親が何役もこなして作品世界についての議論をかわしてくれる、という。コミュニケーションも教育も日常のマナーも、すべてブリグズビー・ベアが教えてくれた。
 それに対して、主人公をとりもどした「実の父親」の形式ばったぎごちなさ。主人公にとって「本当に必要なもの」を与えることができないまま、ものがたりはボタンのずれた状態で続くのだけど、主人公にとっての「人生」がブリグズビー・ベアであること(ベアが彼の人生の一部であること)を理解したのちは実の父親もサポートにまわります。
 これは、魂の叫びのレベルで「好きなもの」があるのに、家族から奪われていく人たちへの応援歌。俳優になりたかったのに警察官やっている人も、主人公と接しているうちに目覚めて俳優魂を呼び起こします。人に恵まれていた、という点が主人公の幸せなところです。こんな素敵なファンタジー、めったに遭遇できません。
 社会からはずれてしまったものが、周囲の人間たちをまきこみながら理解を得て、周囲の人間たちをも変化させて自分の居場所をつくりだしていく映画。随所に、SWネタ(まだ希望はほかにある)以外にもSF映画ネタが大量につめこまれているあたり製作陣の愛も感じます。

 Figmaあたりでブリグズビー・ベアださないかなあ。サントラもほしいなあ。