Anything Goes (again) ...

Yahooブログから移りました

「キャロル」(印画紙のフラットニングをしていなかったのではないか疑惑)

イメージ 1

 ケイト・ブランシェットの圧倒的存在感を見るためだけに映画館にいってもいいくらいの出来。ルーニー・マーラも頑張っているけれどやはり格の差がでてしまったかな。50年代のアメリカの雑で混沌とした様子、落ち着いた色調の画面づくり、男性キャラがのきなみクズ、と、そういう視点からのご都合主義的な側面は「マイ・インターン」と近いのだけれどこちらのほうが圧倒的な完成度の高さをみせました。流行りの同性愛モノだけれど、途中もだれることなくしっかりと物語は進んで行くし、ラストシーンもきっちりとしめてくれる(きっちりしすぎて、エンドクレジットのいさぎよい始まり方にびっくりするかも)。相当いれこんだらしくケイトは製作総指揮にも名前が入っていますね。
 ただ、画面は美しいのだけれど、どうも絵作り的な繊細さに若干のアンバランスさも感じてしまった。テレーズの仕事と夢、自立には「写真」がキーワードとなるし、ポートレイトのシーンは予告編でも印象的に使われているわけだれど、カメラ関係の人間のアドバイスをいれなかったのかしら、と。最初に使っているカメラはこの時代のアメリカらしくARGUSなのだけれど、保持のスタイルといいシャッターの切り方といい、「それ絶対ブレてるよ」という演技。さらに、キャロルにフォーカスするシーンでは一眼の様な合焦シーンまでいれていまうけど、ARGUSはレンジファインダーでしょうが、と。自宅で焼き付けをしているシーンもある(フイルム装填シーンはあったけれど現像シーンははなかったような)けれど、水洗している様子があまり見られない上、そのままロープに角をクリップどめして乾かしていたけれど、バライタでそれやると巻物になるだけでしょうが、とか。どうでもいいとこだし、画面のオシャレ度を演出するためにそうしたのかもしれないけれどちょっと興が覚めてしまうなあ。ビクター、キャノン、と日本製品も随所に登場します。写真に関しては、棚ぼたラッキーで雑誌の仕事を手に入れてしまうご都合展開なので、たぶんあまりちゃんとしようという意識もなかったのでしょうね。

 車がニッケルメッキぴかぴかなパッカードだったり、いまだと考えられないくらいポートレイト撮影にオープンな時代性だったり、この時代のアメリカを追体験するのにも悪くない一本です。「今の時代」「今のアメリカ」にとって、これはどこか響く作品だろうなあ、と思う。たぶん「そういう意図」で映画化されています。ただ、やっぱり細部の手抜きがちょっともったいなかったかな。