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Contax RTS III(あこがれだったハイエンド機種)

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 PentaxMXを雑にふりまわしていた中学生時代に、たまたま新宿のヨドバシカメラで手に取ったRTSに衝撃をうけました。手に持った時のフィット感、操作に必要なボタン類が全部自然に届く配置、電子シャッターの繊細で、そのくせに確実な手応え。いわゆる「ひとめ惚れ」というやつです。その後、またしても貯金をして高校のころにRTSを購入し、以後大学院以降までずっとメイン機として使い続けていきました。途中で電子化のすすんだRTS IIがでましたが、デザインはほぼいっしょなのに持った時のバランスがRTSと違ったのを嫌って中古のRTSを買い足して予備機にしたり。ワインダー、接写リング、ベローズから対物レンズアダプター等の接写システム一式、レンズもプラナー50mm1.4から、ゾナー85mm2.8、マクロプラナーの100mmとSプラナーの60mm、あげくにプラナー85mm1.4(1.2はいまだにご縁がありません…)、と揃え、ボディも最終的には三台体制で使いまくっていました。最初に買ったボディはモルトもべとべとだし表面の合成皮革もくずれてきているしシャッターも泣きます。二代目はリバーサル専用として使っていました。三代目に購入したものは教え子が地方に移動するときに簡単な望遠ズームとセットでひきとられていきました。RTS IIIは、最終形態のフラグシップモデルとして気になってはいたものの、さすがに手が出ず、仕事で撮る写真がデジカメに移行する直前までは格安で手に入れたAXをマクロプラナーと組んで使うようになっていました。AXのボディ内ボディによるオートフォーカスには随分野外や標本撮影で助けられましたし、ちょっと癖のあるカメラではあるけれど気に入っていたのですが、それでも気持ちの片隅にはRTS IIIへの未練も残っていて…なんというか、AXは重くはないのですがその構造のせいで「ぼったり」としているのです。IIIのかっちりみっしりとした信頼感に憧れがあったのかもしれません。ただ、なかなか価格がこなれないものでそのままになっていたのでした。

 さて、たまたま、銀座松屋の中古カメラ市に顔をだした際に、ダイヤモンドカメラさんのところにRTS IIIを見つけました。2万円代前半の値がついていて、塗装が少しはがれている以外はヘコミやアタリもなく問題のなさそうなボディ。剥がれているといっても底蓋とホットシュー近傍のみです。もともと、いつもORWOの16mmフィルムでお世話になっているかわうそ商店さんに顔をだすのが目的みたいになっていた(銀座松屋の場合、いつもライカハッセルのような「単価の高いモノ」に集中しがちなイメージがあってあまりカメラ自体には期待していなかった)ので、同一価格帯ででていたMikromaに目移りしたりしながら、結局、触らせてもらい、動作を実際にたしかめて…買ってきてしまいました。「ボディ内ボディのAX」と「RTVシステムのRTS III」というのはコンタックスブランドの中でもとんがった二機種だったわけで、それがとうとう揃ってしまいました。さりげなく、視野率も100%です。

 RTVシステムはツアイスレンズを口実とした、AXと並ぶもうひとつのコンタクッスブランドにおける変態です。プラナー85mm1.4のピントの薄さが常に話題になるのなら、その開放時のピントの薄さに対する安定を提供してやろうじゃないか、というあたまのおかしい発想の産物です(すごく褒めてる)。本来なら中判大判で使われている技術だった、という点でもAXの二重ボディシステムと系譜は似ているのかもしれません。要するに、撮影時にフィルムを裏蓋側に吸引して平面性を確保するシステム。そのため、電源投入時やレリーズ時に他のカメラとはちょっと異なる挙動をします。一瞬、メカニカルな音と動作が匂うのです。とはいえ、普段の使い方でそこまでの平面性が必要か、といわれると、たぶんそんなことはないので、ここにあるのはただこれがフラッグシップの矜持である、という意気込み。このカメラが出た当時は、プラナー85mmの開放時のピントの薄さ、レンズの個体差による絞り込み時のコンマ数ミリのピントの浮動、といったことがまことしやかに語られていた、ということもあってメーカーとしてのがっぷり四つ的「回答」であったのだと思っています。そして、そこまでフィルムの平面度にこだわっているのにもかかわらず、ボデイ上面には「フィルム基準位置」のマーキングが存在しない、というあたりもたぶん美意識だったのでしょう。

 ファインダー倍率は低めだけれど視野率は100%。この100%という数字もフラッグシップのプライドだったのかもしれません(視野率100%、というのも当時の一部の人たちの間では「カメラ評価」の基準でした)。ファインダー内表示はフィルムカウンターまで表示される上、青い液晶で上品(だけど明るいところではちょっとみづらい)。単三6本、または2CR5で動く(重量的に基本は2CR5運用でしょう)、というのはちょうど初代RTSにRTWをつけた感じです。それでこちらは秒5コマで撮れるし、縦位置レリーズもついています。RTS命名理由であるリアルタイムシステム、としては電源スイッチが搭載されてしまっているところが少し惜しいところ。シャッターレリーズが二段押しになったこととあわせて時代の要請だったのでしょう。それでも伝統の露出チェックボタンもちゃんとあります。
 と、いうわけで最も気に入っている(個人的には万能と思っている)マクロプラナー100をつけてあそんでいるのです。

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