Anything Goes (again) ...

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スピード・レーサー

 二時間半を感じさせないスピード感。元のテレビアニメを知っていると、丁寧にCGで再現される構図や、同じ効果音、背景にシビレます。サイケな色使いも派手だけれど嫌みではなく、途中で気にならなくなります。しかも、この色使いのために最後の紅白チェッカー背景が最大に際立つというしかけ。
 鳥肌が立つようなかっこいいシーンの連続で、おもわず立ち上がりたくなる。こんな映画はひさしぶりです。なんというノリやすさと贅沢な映像。子供とチンバンジー(どこで二匹がいれかわっているんだろう)の絶妙な突っ込みもすばらしく、BB2000改め強すぎるレスラー、ジョン・グッドマンもしぶいし、魔女改めアメリカンなママなスーザン・サランドンのパンケーキがまたとてもおいしそうで。
 マッハ号の仕掛けも原作どおり。タイヤの再生が見事に「みたことのある」シーンだったのには鳥肌が立ちました。ウォシャウスキー兄弟はMatrix1の後はなにひとつ面白い映画をつくってこなかったけれど、これは、ひさしぶりの見事な映画っぷりです。やればできる子たちじゃん(笑)。Matrix1はヲタクが懸命にSFと哲学のガジェット使っておしゃれなことやりたがっている、という露骨な臭気がただよっていたけれど(そのせいで、こけおどしにはなっていたけれど実際には陳腐きわまりない設定にすぎず、そのために2と3はすごくつまらない駄作になっちゃった)、これはシンプルだけどツボをおさえたストーリー。この兄弟、やっと映画のつくりかたを理解したのかな?とか思います。

 すでに二回見たけれど、もう何回か映画館で見たいなあ。品川の特別スクリーンにかかっていただろうか…

 先行試写をみた人たちのレピューもどきを見ると「ピ」が気に入らないという「ないぃゔ」な(笑)意見がたらたらとたれながされていますが、若者なんでしょうね。もともと、当時の作品には「こんなガイジン、どこにもいねーよ」というような「あからさま」な外人キャラがお約束だったわけですが、ハリウッドでつくった場合にアメリカ人もってきても「がいじん」にはなりえないないわけで、ピの起用はしごく当然の流れです。役柄としても問題なし。ヘルメットの上の文字がカタカナの「テジョ」に見えたのは気のせいだろうか。まあ、心に余裕がない気の毒な方も少なくない、ということで。
 実際、すさまじいまでの娯楽性とカッコよさが凝縮された二時間半です。たぶん、もとのアニメを見ていなくても十分に楽しめるでしょう。タツノコ作品独特の画面きりかえとか、すごくこまかいところまで見事に再現されていて、当時、テレビ画面の前に釘付けになって「もっと離れて見なさい」と毎日親に怒られていた者としては涙なくしてはみられないくらいの感動をいただきました。
 正直、先週みて感動した長江七号がかすんでしまうくらいのすてきな「親子もの」でしたし、監督がヲタクだからこそ可能な微小な細部まで再現されたマッハ世界もシピレます。
 先代のマッハ4が赤くてかっこいいし、マッハ6もなかなか。アオシマあたりでマッハ6でないものかなあ… 4は5に手を加えることでなんとかなるんだろうか…

 まあ、アメリカだからレースというのはカートでありインディで、しかもスポンサーの都合かコースが実物大HoTWHEELというのはご愛嬌(笑)。スタート ユア エンジン ではじまり、ミルクで終わるのも一つの感動のスタイルですしね。

 正直いって、アニメの実写化というのはここ数年不作もいいとこでした。アメリカでもともとのシリーズが売れたTransformerだけが異彩を放っていたのであって、大概は鉄人とかデビルマンとか、制作者の中途半端なこだわりが裏目にでたり、キャシャーンみたいに制作者自身が元のアニメになにひとつ敬意をはらっていなかったり、と最低最悪な作品ばかりが量産されました。(正直、ヤッターマンもその系譜に名をつらねそうでこわいです) でも、スピード・レーサーはちゃんと原作アニメを好きな人たちが、きちんとつくればすばらしい作品ができあがる、ということをきっちりと証明してくれました。つまるところ、ウォシャウスキー兄弟は「マッハGoGoGo」が大好きなんだ、ということです。「ファンとして」クリエイターが最大限に才能を発揮しないといけないということ。日本の自称くりえぇたぁな皆さんもがんばらないといけんのではねぇですか? クリエイター目線でつくられた実写版モノがことごとくコケまくっている現実には理屈がある、というのはしごく簡単なリアルです。

追伸:
 テジョのヘルメット上の文字はハングルでした。そりゃそうだ。フジとGrandPrixとのMach6のデザイン上の違いってないのだろうかなあ。
 三回見ましたが、上映している間にもう何回か見ておきたい。これ、やっぱり大スクリーンでみないと魅力半減ですから。ただ、観客がいつも少ないのが気になります。あっという間に上映終わってしまうのではないかとびくびくもの。とりあえず、今年前半の映画の中ではベストの面白さですよ、これ。
DVD出たらeye-trekみたいなので見ると楽しいかもしれません。