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Yahooブログから移りました

「エンジェルウォーズ」(不意の一撃・「私が君たちだったらもう飛び立っているがね」)

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 ブログラムは原題のままで一安心。
 地元のレイトで初日。うーん、この監督、300の時は気にも留まらず、ウォッチメンのときは気にはなるけどなんとなく(ベタすぎる印象のせいで)劇場にいかなかった上、フクロウはなんかどうでもいいや、だったのですが、スカパーでウォッチメン見てしまってはまりました(HDで録画してあるのにBD買い直しちゃうほど)。
 で、今回。
 初のオリジナルということですが…好き放題やってますね。子供の妄想をそのままストレートに「世界観」にしたてるとこうなる。もちろん、この場合の「世界観」とか「リアリズム」という言葉は評論中毒の手合いの自慰用語なので基本的にどーでもいーのですが。
 つらい現実に、それでもなにか対応しなくてはならない時に、「もしこれが…だったら」という「設定」をして乗り切るというのは子供でもムーミンでもやることです。そしてさらに監督は大人でもありますからいろいろとそこにからめていく。劇場型セラピーなんてのを見た瞬間に、今回のストーリーは自動的にできあがるものでしょう。そのあたりはとてもベタベタでわかりやすい。展開がわからない、という人はとりあえずなんでもいいから「物語」を読むこと、それからなんでもいいから人生経験をつむこと、をおすすめします。
 うーん、アデル以上に観客を選びそうだな、これ。
 いつものとおり、単純なものしか受容できないと、一瞬でおいていかれるタイプの映画です。「みてくれ」だけにひっかかってそこで思考停止しちゃうタイプの人も後半は無理、たぶん妄想世界のバトル以外みたくない、とかでしょうねえ。よくもこんな作品を配給にのせられたもんだ(ほめことば)。

 もちろん趣味全開なのでデザイナーに寺田克也を起用したり音楽がアレだったり、CGがアレだったり。映画館の売店にみょうちくりんなストラッブセットがあったけどなんだこれ、と思っていたらちゃんとでてくるし。

#今度劇場行ったら買っておかなきゃ。
#というか、そうすると自動的にベイビードールの使っている銃も欲しくなるんだけど、
#あれのモデルはなんだろうか。手持ちのモデルガンのグリップにはストラッブ穴がないんだよね…

 考えてみれば耳が痛い人だと冒頭のナレーションの時点で全体像が見えるんですねえ、これ。
 レノックスのほうではロケットやアンバー、ブロンディはどうなっていたのだろうなあ。あの世界での「死」は「楽園」だからロボトミーされてしまった、ということなのかな。
 どーとく大好き、な方だと義理の父親が結局野放しなのがけしからん、とか思っちゃいそう。まあ、ブルーが全部吐くだろうからなにもないということはないでしょうけど。
 さらにいっちゃえば、バスの中にいた人たちは?とか、が、ロボトミーの結果はどうなっているの?、とリンクすれば、この物語にはさらに拡大した続編世界がありそう。続編できるくらい売れてくれるといいなあ。だって世界を構築していたベイビードールの脳をダイレクトにいぢったんですよ。それも、「すべてが解決する」と予言された上で。無反応になっているのは通常のロポトミーの結果とは違う、ということも言明されています。そうすると、どうなっちゃうんだ?バスの少年は賢者と同様に両方の世界に存在しているわけだし、まだまだしかけは残されているよなあ…

 まあ、他の監督だったらもっと違うラストを用意したでしょうね。もっと観客が「納得」とか「理解」とか「共感」しやすそうなつまんないのを。ジブリっぽいラストを。でも、この監督です。ロールシャッハが確たる主役であるが故に物語のラストで退場するように、この映画はまさしくこの監督のものでした。

 動きやCGがそれぞれ露骨に日本のあれとかこれ。ただし、映像の完成度はへたするとこっちのほうが本家より上です。それだけでも一見の価値あり。クリアファイル裏の絵なんかVF25のノーズアートか、と(笑)。
 個人的には見事にツボにはまった一品でした。スキャナー以来、かなあ。普通の人におもしろいから見てごらんよ、とすすめることは、たぶんできません。この感覚を共有できそうな人にはつよくつよくおすすめします、みたいな。

 たぶん、後にひかえているアジャストメントよりもこちらのほうがよりディックっぽいと思うけどどうかな。

 しかし、プログラムの中でもなんとなくフクロウが触れてはいけないものっぽい扱いなのはどうしてなんでしょか(笑)。


思いついた追加。
 ・少なくともレノックスから一人の患者をベイビードールは逃がしている。
 ・コックは無事、ブルーはさされた場所に怪我、放火場所はちゃんと燃えている。
 ・冒頭のロボトミーシーンとラストのロボトミーシーンはつながっているようにみえる。
 ・賢者実父説はあり得るとは思うけれど、それよりもラストシーンユービック説をとりたい。
  あのバスは、ジョーチップ金貨なのではないか。
 ・賢者はスイートピーが「戻ってきた」ことに言及している。

 こうやって見直してみると、初期から中期のサービス満点時期のディック作品のテイスト、というのが一番近い気がしてきた。

 しかし、Yahooのユーザーレビューの二極化っぷりがなんともいえません。やっぱり、ちょっと複雑な展開になるとついてこれない人って多いのだな、ということと、ジブリ的ハクチハッピーエンドじゃないとやだやだという人もいっぱいいやがりやがるな、と。
 いろいろな意味で楽しめる映画です。おしむらくは字幕Imaxでみたかった…
 川崎はどうなってるのかな…

P.S.
やはり蛇の道は蛇。M1911と判明しました。
それっぽいのをさがそっと。

 ほうぼうで不評な邦題ですが、考えてみれば監督は「タイトルから内容が推察できないようにしたかった」と言っている訳で、その意味では原題よりもエンジェル・ウォーズのほうが内容からかけはなれていて監督の意図にはふさわしいのかもしれません。