Anything Goes (again) ...

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ペンタゴンペーパーズ "The Post"(活字は素晴らしい)

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 マクナマラ文書。結末を知っているので、どうやってドラマを組み立てるのか、という目線になるのですがそこはさすがスピルバーグでした。「こうすれば映画になる」という正解。たぶん、イーストウッドにはない作り方です。
 興味深いのは、これが「隠し事をする政府」と「暴露しようとするマスコミ」の戦いだということ。公開前は、そのあたりを某野党の政治活動に接続させたいような文言がネットでも散見されましたが、実際に作品を見てみると、日本の現状に当てはめた場合「ニクソン側」の言動が野党、マスコミのそれに該当する、という皮肉でしょうか。ただし、ニクソンではないのでなにひとつ権力はありません(まあ、ニクソンだってポスト関係者はホワイトハウスに入れるな、程度のことしかできなかったわけですが)。

 物語としての構成の見事さに流されているうちに心地よくラストのウォーターゲイトへの入り口まで運ばれていきます。うまい。ただし、最低限前提される背景の知識はないといけません。とはいっても義務教育の社会の範囲なのでそれほど高いハードルではありませんが。

 そしてそして、「活字の素晴らしさ」。組版で、活字を並べていく工程、必要な活字を鋳造する工程、輪転機から吐き出される新聞の流れ、どれもが美しく、かっこいい。スクリーンからインクの匂いがしてくるのではないか、と錯覚するほど。メディアがPC化されたとことで職人の手が入る部分が減り、その結果、新聞もちゃちな偽物にしかならなくなったのではないか、と想像できてしまいます。

 メディア関係者はちゃんとこの作品を見て、少しは何かを考えてくれると良いなあ、というのが感想。