Anything Goes (again) ...

Yahooブログから移りました

メッセージ(ばかうけ、かな)

イメージ 1

 「あなたの人生の物語」が「Arrival」になったのにどうして邦題がこれなのかは謎ですが、テッド・チャンの短編です。よくできたSFの短編をSFとして映画にしようとした製作陣の意気込みはよく伝わってきていて、冒頭からしばらく続くシークエンスの2001年感、物語の全体に染み渡っている未知との遭遇感に背中をおされながら物語がすすみます。
 ただ、もともと一発ネタ(言語体系による時間認識)なので、それを一本の映画の尺に引き延ばすのに苦労した感じあり。さらに、アイデア自体も小ぶりなので結末に持ってくるにはものたりず、かといって、映像表現重視の結果細かいことがいろいろと説明されず、という中途半端さを持ってしまったのが残念。コミュニケーションの素材として「競技」を用いたことで中国が暴走する、というところは面白かったけど。
 主人公の時間認識能力ってヘプタポッドと出会う前からあったの?とか、アボット、そうなるとわかっていて自分の身を守れなかったの?とか、まあこまごまとしたことを言い出したらきりがないです。とりあえず、アウグスティヌスのいうように「時間」について語ろうとするとわからなくなる、のを、「それでもわかってしまうならどうなるか」というのが時制をもたない言語体系。なので、彼らのいう「3000年後」というのはあくまでも人類にとってであって。彼ら的には「後」というのはないわけなのよね。このあたりは所詮は一発ネタだったんだからあんまり突っ込むなよ、でしょうかねえ。だいたい、「言語によって概念が変わって」云々というのも結局主人公一人だけでしょこれ。だとするとそれが本当に「言語によるのか」も怪しい。
 SFとしては少し前のオブリビオンみたいなつくりのほうが映画としての姿はちゃんとしているし、最近だとパッセンジャーなんかもおしゃれだったし、今回のは悪くはないけど物足りない、というところかしら。がんばってみたけれど力及ばず、SFってむずかしいね、という映画です。
 ただ、音楽は素晴らしかったので、帰り道でAppleMusicからサントラを落としました。ジーグの時といっしょだ(これやってると月末あたりに制限をくらうのでほどほどにしないと)。