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緑茶現像(茶葉を粉砕して使う、というのは応用がききそう)

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 緑茶現像液、というものがあるということを知りました。ところが、webには詳細がでてこない。情報としては「写真工業」の66巻12号に阪川・西山による2ページの記載があるけど、「写真工業」の編集部にもバックナンバーが残っていない、という状況。なので、図書館で文献複写を依頼してとりよせました。修士の学生さんとの連名なので、その後の追加情報がみつからない、ということはそういうことなんだろうな、と推測したり。
 たった二ページの記事ですがなかなか面白い内容です。過不足なく必要な情報が網羅されているのはさすが理系、という感じ。さらりと行間に流されていることなんかを考えるとこの二ページのために相当の試行錯誤をしています。おかげでとても役に立つ文献となっています。
 緑茶現像自体は実にシンプルなもので、「コツ」は抽出するのではなく「茶葉を粉砕する」こと。処方としては粉砕茶葉と炭酸ナトリウムのみで現像をしています。主剤としての緑茶にこだわったためにビタミンCはいれていない(いれてみた際には現像力があがったとの記載あり)とのこと。興味深いのはフィルムの種類に応じた結果で、ISO400のフィルムでは「感度低く軟調、ゼラチンの着色強い」とあること。これはいままで「期限切れTri-X」を使ってきて感じていたことです。現像はできるが実用的ではない、との扱い。あと、ほかに紅茶、ウーロン茶、抹茶も試していて、いずれも現像力が弱い、とあります。なるほど。そうすると高温高圧で抽出するのと、細かく粉砕するのとではどちらがよいのだろう、という疑問はわいてきます。コーヒーとお茶の違い、という可能性もあります。興味深いのは抹茶ではだめで「緑茶の茶葉を粉砕直後」のものが良い、ということ。茶葉の鮮度とかはどうなのだろう。そもそも、現像液に粉砕した粉末を懸濁した状態で使用する、というのは目からウロコでした。途中の水洗をきちんとしなくてはならないわけですが。

 さて、どうするか。原典通りで試してみるかCCMにのっとって茶葉に置き換えるのか、というところで悩みます。あとは、フィルムをISO100のものに変えてみるか。ビタミンCの主剤としての働きは、相当量入れないと現れてこないことはすでにビタミンC現像で確認してあります。なので、ここはいつものパターンのCCM変法でためしました。フィルムも比較できるように(単に手持ちがあるから、とも)いつもの期限切れTri-Xで。スタイルとしては、炭酸ナトリウム10.8g、ビタミンC3.2gに、コーヒーのかわりの茶葉15g粉砕粉末。たまたま家にミルサーがあるのでこれで粉砕してみました。本当はデロンギのグラインダーが細かくひけて良いのだけれど、コーヒーにお茶の香りがまざるのはちょっとさけたい(笑)。しかし、急須で入れる時のことを考えると茶葉15gって多いです。
 で、これは失敗。最初のコーヒー現像時の失敗同様真っ黒にカブリました。記載ではASA400でもできる、とあるのでビタミンCのせいでしょう。なので、CCHベースに戻してまたしてもブロムカリを追加。結局いつもどおりに、炭酸ナトリウム10.8g、ビタミンC3.2g、プロムカリ0.2g、粉砕茶葉15gで現像液をつくり、前浴5分、現像15分、水洗4回、定着、としました。気をつけたことといえば、現像時の撹拌で、ちょっとおくとすぐに茶葉粉末が沈殿するのでいつもより多めに。

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 これで現像できました。記事にあった通り、像は薄く粒子も荒くフィルムベースもダークグリーンにそまっています。とはいえ、これはいつもの期限切れTri-Xであることを考慮すると、ちゃんとASA100フィルムで指示通り現像すればもっと良好な像がえられるのだと思います。緑茶現像の注意点は、「現像液の廃棄」です。粉砕された緑茶の粉末をちゃんとキャッチできる状態で流さないといけません。15g分の粉末がそのまま下水に投入されてしまうとたぶんどこかでつまるでしょう。植物だからバイプスルーでも溶けないだろうし、ちゃんと流しに目の細かいネットを用意してから廃棄しないといけません。
 ASA100のフィルムを使うのなら、文字どおり、茶葉と炭酸ナトリウムのみで現像ができる、というこの方法はもう少しひろまってもいいのではないかな、と思うのですが、やはり「粉砕する」ハードルが高いのかな。家庭用のミルサーでできるのですが。

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 さて、さすがに色物現像はこれで本当に一段落、という気分。また何かおもいつくまでは普通にもどります。
 ところで、コーヒー現像もそうなのですが、この手の現像液って定着液を著しく消耗させます。SuperFujifixの処理能力の数分の一で液が疲弊してくる感じ。ちょっと抜けが悪いかな?と感じたら、フィルム片で試し定着をして、早めに交換するのが吉、です。