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Vester-box (白昼現像、というシステム)

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 暗室もダークバッグもつかわずにフイルムの現像をする、というものにも一つの憧れみたいなものがあって、実際に自分が中学の頃に買った最初の現像タンクはキングのデイロードでした。結構つかったのだけど、36枚どりがはいりきらない、やたらと現像液がたくさん必要、ということで次第にベルト式に移行していき、さらのその後にステンレスの両溝に切り替えて今にいたるわけです。そのキングのデイロードタンクも実は結構古くから売られていたことに気がつくのはオークションを眺めるようになってからで、さらに、それ自体がライカの現像タンクのコピーだった、ということを知ったのは写真工業のバックナンバーを集めるようになってから、でした。
 その Leitz Tahoo Correx(これがキングデイロードの元。同様のスタイルでKODAKの製品あり)が1938年で、またその少しあとに白昼現像タンクの雄としてAgfaからRondinaxが出現。Rondinaxはコピー製品をいくつか生み出したようで、Vester-Boxはどうやらその流れみたいです。(これはさらに近年のkickstarterのLab-Boxにも引き継がれているみたい)。このほか、別の仕組みとして35mm用としてはJoboの2400というのが白昼現像用タンクらしいです(まだみたことがない)。
 さて、このVesterBox、Rondinaxのコピーなので120フィルム用です。説明書もあるのだけれどなんとも要領をえないというかよくわからない。図版のページがいったりきたりするし。で、 https://rondinax.wordpress.com にてRondinaxの使い方をたしかめてようやく理解。そもそも、説明書からして本家のコピーみたいなものでした。構造としては、最初に肩の部分のフィルムボックスに裏紙をはずしたフィルムを巻き込み、内部のリールからのびているクリッブでフィルムの先端をつかんで側面のダイヤルでさらにリールに巻き込む、というもの。巻き込む際には先に現像液をいれておき、あとは現像時間中はひたすらダイヤルノブを回転させます。現像液が150mlですむ、というのはメリットかもしれない。いや、やってみないことにはなかなかイメージがつかめない機械です、これ。
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 ダイヤル位置に「開ける」「閉める」以外に「閉めた状態で内部のフィルム室を開ける」モードがあります。一旦、裏紙からはずしたフィルムを中のフイルム室に閉じ込める、というアイデアなのでそうなっています。でも、そんなめんどうなことしないで最初から「裏紙を外しつつ、フイルム先端をクリッブでつかんでリールに巻き込む」でよくなかったのかしらこれ。遮光が複雑になるからやめたのかな。

 さて、使ってみると、まずは経年劣化による問題がいくつか。1点目はフイルムをリールに引き込む革ベルトがボロボロで、液の入れ替えのたびに革の破片がゴミとしてでてきます。ボトルに戻すなら濾過が必要なくらい。もうひとつは(こっちのほうが大きい問題なのですが)、構造上、側面のリール回転用ダイヤルはゴムパッキンで液漏れを防ぐようになっている(リールの中心はほぼ液面にある)のですがこれが劣化していて、回転させるたびに液が漏れます。これについては、タイヤ補習用のラバーを盛る、という対処法はあるみたいですが。

 もうひとつは構造上の問題。使用説明書をみると、フイルムをフイルム室に移して端をクリップでつかんだら、「タンクに現像液を入れてからリールへの巻き込みをする」とされています。このあたりは人によってばらつきがあって、例えば昭和27年の「写真の教室 臨時増刊 現像から引き伸ばしまで全集」では、巻き込んでから現像液をいれる、とあるし、上のサイトにあるムービーでもそうしてます。
 これは、使用する液量に原因があるみたいです。このサイズで液量が「150ml」という少量なのは、「リールの一部だけが液に浸かっている」からです。なので、現像から停止、定着まで、「リールは止めてはいけない」、常に回転させていないとムラが生じる、という。説明書で現像液を先に入れるよう指示されているのもたぶん、できるだけ均一にフイルムと液が触れるように、ということです。つまり、現像、停止、定着、という作業の間はひたすらダイヤルをまわし続けていなくてはならず…疲れるのです。その間、液もどんどん漏れます。
 kickstarterのLab-Boxが一浴現像定着液とのセットも作っていたのは、処理時間の総量を減らすための策だったのでしょう。

 と、いうわけでこの現像タンク、面白いけれど、ちょっと常用するには面倒臭いな、という結論に至りました。とはいえ、35mm用のほうも気になってはいるのですが…