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スリー・ビルボード(これぞザ・映画)

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 セブンサイコパスマクドナー監督の新作。俳優も随分重なっています。予告編的には娘を失ったミルドレッドの物語、のようにみえますが実際には駄目っ子警官ディクソンくんの成長譚。いいはなしです。サム・ロックウェルってほんと、こういう精神のバランスの微妙な役がうまい。ウディ・ハレルソン猿の惑星に引き続きまたしてもこういう役か…
 セブン・サイコパスもそうだったのけれど、むちゃくちゃ好みな作風です。渋い、でも派手な群像劇の中に人生と哲学と宗教がせめぎあい、登場人物たちの人生が回っていく。
 ディクソン、南部の無教養なおばかさん。憎めない、とはいいません。やってることは確かに酷いのだから。でも、おばかさんなので、背中をおされるとまっすぐに動こうとします。ミルドレッドの元旦那が付き合っている若い女の子、おばかなようでおばか、なのだけれど、いくつか強烈なセリフを落としていくあたり、奇妙な存在感あり。物語をつきうごかすあのセリフよりも、「ポロ」と「ポリオ」を間違えてみせたシーンが背筋にきました。
 南部の典型的なアメリカの物語なのに、背景にかかる音楽がおかしい、というのはパンフレット(めいた例の雑誌)に町山さんの解説がありました。なるほど。「知らないとわからない」ことが山のように含まれる一本です。

 例によって、自分の好みの映画というのは賛否が分かれる感じなのですが、今回は明瞭に「わかりやすい邦画」を目的とした人たちには全く合わないだろうな、と思います。逆にいえば、邦画界は味噌汁なんかかで自愛していないで「こういう」作品をつくれば(つくれれば)見に行くのに、とも思います。「政治をかたらないと政治を語れない」というのは無能の証しでしかないでしょ?とか。

 個人的には、比較的おとなしめに物語を構成したな、という感想。もっと、ブラックなユーモアがところどころに溢れるのかと思っていたら、細部細部に人のつながりのいい話が接着剤としてでてくるほどで、悪ノリは影を潜めています。オレンジジュースとか。

 ところで、アビー・コーニッシュを紹介するときにはやっぱりサッカーパンチの名前をだしてほしいなあ。