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ナイトクローラー(ダン・ギルロイ 監督デビュー作でこのクオリティはさすが)

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 パパラッチ、というすでに定着した言葉があるけれど、事故現場に密着した映像を生業とするナイトクロウラーもそのカテゴリといっていいかもしれない。
常識的な感覚では頭のネジが何本もはずれたような商売。ジェイク・ギレンホールの淡々とした演技がじわじわと作品をもりあげていきます。
 前半パートが主人公ルーのキャラクター説明を兼ねているので少々冗長かもしれないけれど、あっという間にジェットコースターにのせられるので大丈夫。
事故の時にすかさずスマホのカメラを向ける国民性にとって、それによって大金を稼ぐ仕事というのはわかりやすいでしょう?きちんとした説明なんかほっぽらかして「ほら怖いですよね」「そら酷いですよね」というニュース、みんな好きでしょう?、という作品。
 カメラを手にしたジェイクの演技力が光ります。さりげなく、カメラが次第にアップデートされていくし。

 人間は自分が見たいものに金を払う、という大原則。「見たいもの」をいかに商品価値の高い状態で用意、提供するか、というプロ。そこに商売が関与する以上、正義や倫理とは違う軸での判断も不可避なのです。「結果的に」身近に潜む凶悪犯をさらけ出すという意味ではダークヒーローの一種であるともいえるでしょう。大きなポイントは、主人公が有能だけれど極めて「からっぽ」だということです。彼は、外の世界にアピールできるものを何一つ持たないため、小さな自分の世界で実現可能な評価軸が欲しい。経験も学歴もないため、ネットで知識を集めながら簡単なこそ泥からスタートし、きっかけをつかんでナイトクロウラーとして仕事をはじめ、金銭の流れを把握するや着実に前進していきます。薄気味悪く、うすら怖い恣意的な報道背景。
 演出も上手です。ややもすると単調になりがちな内容なのに、しぼりきった脚本と演出でドラマチックな世界ができあがっています。観客は、スクリーンのこちら側で見ているにもかかわらず、監督の技量のせいでこちらもまた「恣意的に操作された」世界をみらせれている気持ちになる。観客のポジションを当事者レベルにおとしこんで物語を暴走させるこの演出はさすがです。音響の使い方もうまい。
 カーアクションも絶品です。車みるだけでもたぶん相当の満足が得られるでしょう。

 こういう映画がきちんと評価される、というのはうれしいことです。