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コーヒー現像は単純に好奇心から(問題はハイドロキノン)

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 フェニドンが入手しにくくなったことを調べているときに「現像主剤は毒性があるから規制されるのでは」というふんわりとした言葉がネットに流れているのを見たり、「環境にやさしいコーヒー現像」というフレーズを目にして「???」となったりしたことも遠因の一つ、です。なんじゃそりゃ。
 だって、典型的なD76処方のハイドロキノン含有量って1,000ml中に5g、つまり0.5%。そのへんの「美白用化粧液」のハイドロキノン含有量とかわりません。そもそも、ハイドロキノン自体がコーヒーとか紅茶とかイチゴとかにも含まれている物質なのだし、「発ガン性」というのもラットの経口投与によるものだし、なんだかおかしいぞ、と。「発がん性のある現像主薬を使わず」という表現も目にしました。無責任に煽りゃいいってもんじゃないでしょうに。ハイドロキノンのヒトへの発がん性は確認されていないし、そもそも毒物にも劇物にも指定されていないし、もしかしてラットの結果を鵜呑みにしたのかしら。それとも発言しているのがラット本人なのかしら。いや、上に挙げたように、現像液の発がん性を気にするのなら美白用化粧液なんかもっと恐ろしいんでないのかしら。美白用ハイドロキノン溶液、10%水溶液とかで売られているし、「美白現像」もできるのではないの?という。単純にハイ「ドロ」「キノン」という文字列の発音がものを知らない人たちの恐怖を煽るのではないか、とか妄想してみたり。あと、紅茶にも含まれているんだからレモンティーに炭酸ナトリウムを加えてpH調整すれば紅茶現像もできるんでないの?とかも思ったり。

 

 現像液のハイドロキノンの発がん性が、とか言っている人は一度奥さんとかガールフレンドさんに「ハイドロキノンって知ってる?」ときいてみればいいだけのはなしで、そうすると「使ってるわよ?」とかいってD-76よりも濃度の濃い液体の入った化粧瓶がでてきたり、「このまえ皮膚科で処方されたけど?」とか「いいやつは高いんだよねえ」とか返ってくるわけですよ。会話、してますか?と。

 

 それはそれとして、有名なCaffenol処方を見てみると、コーヒー、ビタミンC、炭酸ナトリウム、というあたりで構成されています。なるほどこれならそのへんで手に入る。炭酸ナトリウムも台所風呂場用品だし、必要なら(やっている人もいますが)重曹からつくることもできるわけで。あとはカブリ防止用のブロムカリをいれるかどうか。このへんになると専門店いかないといけなくなるので趣味のコーヒー現像の範囲を逸脱しそう(後述しますがこれにひっかかりました…)。コーヒーはインスタントがいい、という話や、豆から煎る、という話もあります。まあ、コンスタントに一定量を用意できる、という意味ではインスタントがいいのでしょう。いや、そもそもコーヒーのハイドロキノン含有量ってどれくらいなのかしら。
 ちょっとだけ調べてみると、もとはコーヒーに含まれるクロロゲン酸の血圧降下作用を阻害するものがある、ということで注目されたのがヒドロキシハイドロキノンだった、ということで、策定法の特許資料からだと8.2mg/Lだとか。これはまたやたらと薄いな。クロロゲン酸の効果を損なわないように、ヒドロキシハイドロキノンの含有量を減らしたコーヒーをつくろう、という特許まであるくらいなので、そうするとインスタントよりもレギュラーコーヒーのほうがよさそうなのだけれど濃度の問題でしょうね。あと、ヒドロキシハイドロキノン含量を減らしたはずのコーヒーなのに180℃で抽出すると増えてしまった、という事例もあるので、だとするとエスプレッソならもっといいのかしら、とか、焙煎でヒドロキシハイドロキノンが増える、とあるからエスプレッソの深煎りがさらにいいのか、とか考えたり。
 ただ、インスタントコーヒーでもスプーンで6杯とか10gとか使っているということはレギュラーコーヒーでは十分な濃度に達しない気もします。普通に飲むのに比べて数倍の濃さだし。それに「ヒドロキシハイドロキノン対策をわざわざ施していないほうがいい」のだとすると「(余計なことをしていない)安いインスタントコーヒーのほうがいい」という話にもそれなりの説得力がでてきます。

 

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 さて、コーヒーは普通に手に入る安いインスタントを使います。炭酸ナトリウムは試薬のも持っているけれどせっかくなので(?)クリーニング用に市販されているものを、ビタミンCも粉末で売られているものをアマゾンから購入。Caffenol処方のCCMにならい総量200mlとして、炭酸ナトリウム 10.8g、ビタミンC3.2g、コーヒー8gを順番に溶かします。これで20℃15分。停止と定着はいつも通りです。で、何回か失敗しました。パーフォレーションまで真っ黒な全カブリ。最初はパトローネが壊れていて光線をひいたか、とかコーヒーの種類とか薬品を変えてみるとかしていたのですがふと気が付いたのが「使っているフィルムが期限切れのTri-Xである」こと。つまり、CCMではなくCCHを使わないといけなかったのです。加えて、「コーヒー現像はカブリが出やすい」という言葉を甘くみていました。よもや真っ黒になるとは… と、いうことで、手持ちのブロムカリ0.2gを加えてCCHとした処方で無事に成功しました… まあ、Tri-Xも期限がきれてン十年たっている代物なのでもともと若干のカブリはあるのですが。市販の現像液がこのあたりについていろいろと考慮されているのだな、ということが実感できます。

 

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 現像結果は階調は豊か、粒子は若干粗い感じでこれは確かに好きな人は好きそう。前浴と現像後の水洗が通常より手間ですがたいしたことではないです。ただ、しっかり水洗したつもりでも、使い終わった定着液がほのかにコーヒー臭をただよわせます(笑)。ネタとしては面白いけれど、これを常用する気にはちょっとならない、かなあ。とはいえ、気になっていることがあるのでもう少し試してみる予定ではありますが。とりあえず、コーヒー現像の教訓としては、

 

・フィルムの感度にあわせた処方を選ぶこと、
・カブリがでやすいのでフィルムの期限や現像時間、温度に気をつけること、
  あたりでしょうか。

 

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 今回使ったカメラはRolleiflex3003です。クセの強い、じゃじゃ馬みたいなカメラなんですが、35mmでウエストレベルファインダーのついたこのかたち、というのが気に入っていて割とよく使ってきました。シャッターを押すと盛大なシャッター音と巻き上げのモーター音が鳴り響くのもご愛嬌です。いわゆる、ちゃちなテレビドラマで「カメラの音」として安易に使われているような音がするのです。(どうしてデジカメなのに巻き上げ音がするのか、いつも疑問なのですが)